2019年10月17日(木)午後、西南交通大学での卒業論文の論題提出は12月ですから、犀浦キャンパスで、日本語学科学部生及び院生への講義「論文作成について」を行ないました。そこで、この概略を紹介します。
A.論文とは
研究論文とは、未知の問題設定(問)により、これを根拠に基づいて論証して、解決(答)するものです。すなわち、問題設定・論証・結論の3段階からなり、根幹は論証部分にあります。しかし、研究水準に達していない学部生の卒業論文では未知の問題設定は無理であり、これは求めません。既知の問題設定でもいいことにします。ただし、論証は自身の頭で考え出したものでなければなりません。たとえ、結果として先行論文があったとしても。
さて、問題設定はどのようにして見つけるのでしょうか。まず、何といっても自身に興味のないことでは無理です。ですから、必ず自身が興味あること、好きなことから見つけるのが基本です。この方向が定まったら、次に如何するのでしょうか。問題設定を見つけるには大きく分けて二つのやり方があります。第1は先行研究から問題を見いだす方向です。第2は資料から見いだす方向です。この二つのやり方は相互に関連しており、単純に一つのやり方とはなりませんが、どちらかといえば資料からを基本とすべきでしょう。最後に、論証に必要な資料が利用できるかと、卒論の規定分量で論文を収められる問題設定かを考慮して、最終的な問題設定を決定します。
問題設定が確定したら、論題を決定します。論題は広く一般的なものでなく、狭く具体的なものとします。例えば、「川端康成の研究」ではなく、「『雪国』から見る川端康成の美意識」というようにです。
B.研究論文といえないものとは?
1.1冊の書物や1編の論文を要約したもの。
2.他人の説を無非難に繰返したもの。
3.引用を並べただけのもの。
4.証拠立てられない私見だけのもの。
5.他人の業績を無断で使ったもの。
1~4は論文が問題設定を論証して解決するものですから、レーポートなら許されることもありますが、論外です。5は絶対条件で、これに反するものは剽窃で、研究上の泥棒といえるものです。このため研究生命を絶たれた研究者は古今東西に枚挙がありません。
C.注記の原則
論文には本文とは別に注が不可欠です。研究者にとって専門分野の論文はこの注に記してある先行論文や資料を見るだけで論文の良否についておよそ見当が付きます。論文にとって注は本文と同等の意味があると考えてください。従って、注は本文執筆と同時並行で執筆すべきものです。本文執筆後にまとめて注を記すなどはとんでもないことです。
そこで、どのような場合に注を付けるべきかを述べます。それは以下の三つの場合です。
1.説明のため a.本文展開上、副次的な論点で本文の流れを乱す恐れのあるもの。
b.大きな問題点でも、それに拘泥していると、本筋が進まなくなるもの。
c.本文の理解上、説明を加えた方がいいもの。
基本的に本文の流れを妨げる論述には、注を付けて本筋の流れをよくする。
2.論証省略のため 先学の説に従って研究を進める場合、その出典箇所の提示。
3.引用出所のためa.直接の引用の出所。
b.自己と他人の見解の区別のために他人の見解の出所。
c.資料の出所。
2・3は「5.他人の業績を無断で使ったもの」ではないことを示すものです。注の一番基本的な原則です。
なお、注は論述の基礎として学問的な手続きを明記するものですから、常識的な事柄や研究分野での自明とされている知識(教科書的知識など)は注記の必要はありません。
以上の論文作成にに加えて、日本語学の論文での慣例的な参考文献表書式と、これに基づいた注表記を規範と実例により述べました。
(2019.10.25)